おなじみクワストさんのところの
ジーザスクライストスーパースターに関しての疑問に再トラックパックです。
さて、JCSの台詞の一行をめぐる話、何気に面白い展開を見せてくれて、書いてみてよかったと思っていますが、この一件はまた、アメリカで宗教をミュージカルで扱う上での難しい問題を象徴しているような気がします。
"Won't You Die For Me?"の一行は、JCSを聖書をストレートにロック・オペラにしたものか、それ以外の解釈を加えたものかの分かれ目となるようです。この一行があると、Jesusは救世主というよりは、Superstarという社会の消費物という意味合いが強くでるようです。
これが何故R&H Organizationからのライセンス版にないかというと、これは推測ですが、おそらくアメリカの地方での上演を頭においているからでしょう。アメリカの、特に大都市以外でのキリスト教倫理の浸透というのは、一般的な日本人が考えているよりもずっと強いものがあります。そういう人に聖書の物語の非キリスト教的解釈を見せると、とたんにアレルギー反応を起こすというのは不思議ではありません。かなり昔の話ですが、やはり聖書を題材として、それをやや漫画チックに脚色したミュージカル"Joseph..."のナショナル・ツアーがアメリカのとある地方都市で上演中、Joseph役のMicheal Damianが(たしか舞台の上で)キリスト教原理主義者に襲われるという衝撃的な事件がありました。
こういう状況を踏まえてJCSの作者サイドでは、基本版では問題の一行は入れない、でも、入れたければ自己責任で入れてもいいよ、という態度をとっているのでは、というのが私の推測です。これを懸命な判断と見るか日和見主義と見るかは、ここでは保留します。
前の記事で私が曖昧な書き方をしたのでクワストさんに誤解を与えたようなので、(どうでもいいことなのだけれど)一応はっきりさせておきますと、私はJCSを3回観ています。1993年ごろにBuffaloに来たナショナル・ツアー、1995年に同じプロダクションが再びBuffaloに来たとき、そして2000年だったか2001年だかのB'wayリバイバルです。1993年のプロダクションに例の一行が入っていたかは正直わかりません。ただ、その後映画版をみる以前にはその歌詞の存在をしっていましたから、おそらく入っていたと思います。、1995年のツアーとB'wayリバイバルには間違いなく入っていました。すでに述べたような理由で重要な一行だと思ってその部分注目してましたから。思うに、メジャーなプロダクションであの歌詞を使いたがるのは、普通の聖書物語では満足出来ないんからなんじゃないかなぁ。