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"Everything in Life is Only for Now."
これはB'wayのヒット作“Avenue Q”の最後の台詞です。 人生いいときも悪いときも決していつまでも続くわけじゃないんだから、投げず、腐らずその時々をなんとかやっていこうや。 この作品の根底をなすこのメッセージ、このブログのタイトルにしました。 ありがとう、エキブロ新聞 フォロー中のブログ
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「ところであなた、サンタクロースが本当にいるって信じてます?」 男が虚を疲れたような表情をするのを見て、俺は、即座にこの男は不採用にすることに決めた。この男も多くの応募者と同じで、サンタクロースが本当にいるとは信じていないのだ。そして、おもちゃ屋のサンタの役なんて子供だましだと思っているのだ。だが、経験上俺は知っている。子供というのは簡単にはだまされない。大人が子供をだまそうと思ったら、大人はそのことを本気で信じていなくてはならない。だから、俺が採用するサンタたちは、自分がサンタクロースだと本当に信じきった上で、子供達に相対してもらわなくてはならないのだ。 俺はNYCにある大手のおもちゃ屋、「B.J. & ショウカーズ」のプロモーション担当の課長だ。この会社はもともと「ショウカーズ」という老舗の名門のおもちゃ屋だったが、インターネットのおもちゃ屋などとの競争に勝てず、2年前に倒産した。最近、B.J. ピジョンバスターという流通業界の大立者が資本参加することでようやく倒産状態を抜け出し、高級おもちゃに特化した店として再出発したばかりだ。「ショウカーズ」時代の管理職たちは、昔の殿様商売ぐせが抜けずに、ほとんどがくびになるか、自分からやめていったが、俺だけは何故か新しい会長のB.J.に気に入られ、失業せずにすんだ。そればかりか、管理部門を出来るだけ大きくしたくないB.J.の減量経営哲学のもと、課長の肩書きでありながら、実質的にマーケティングの責任者にまでなった。まあ、そのおかげで、部門全体の管理から、こうしたサンタクロース役の採用といった、細々した部分までひとりでやるはめになって、てんてこ舞いなわけではあるが、それでも、クビがつながっている分だけでも良しとせねばなるまい。 ここでいう「サンタ役」がなんなのか、知らない人はアメリカにはいないだろうけど、万が一この話が、英語以外に翻訳されたときのことを考えてちょっとだけ話しておこう。おもちゃ屋は毎年クリスマスシーズンになると店内に「サンタクロースにお願いするブース」というのを設ける。そこに親が子供を連れてくる。そして、サンタは子供にクリスマスに何が欲しいかを聞くのだ。子供はそれを答えるが、それに耳をそばだてているのは当然親のほうだ。かくして、子供は「サンタにお願いしたもの」をプレゼントとして、もらえるわけだ。もちろん、子供が欲しいおもちゃの名前を答えた瞬間、サンタは親のほうを一瞥するのを忘れない。親が首を振って、「そのおもちゃは買えない」というサインを出すと、サンタは「残念ながら、そのおもちゃは無理のようだねぇ。何かほかのものにしてくれないかい?」と次の選択へと誘導することになる。 今年は「B.J. & ショウカーズ」として再出発して最初のクリスマス・シーズンだ。失敗は許されない。だから、サンタクロース役選びなんていう割合些細なところまで細心の注意を払わなくてはならないのだ。 とりあえず、組合との協約にしたがった労働条件のもと、ローテーションを組めるだけの最低限の人数のサンタは確保した。だが、俺は少なくとももう1人はサンタを雇っておきたかった。今のこの会社に余裕が無いのはわかっている。しかし、ギリギリの人数で1人でもなにかの拍子に抜けられると穴が開く。それを防ぐために、労働時間延長の特例を認めてもらうべく12月の忙しい最中に組合と交渉する自分なんていう絵を想像するとぞっとする。 ************** 応募者の残り人数も少なくなってきた中、面接の部屋に入ってきた初老の男は、見た目はこれ以上ないというぐらいのサンタクロースそのものだった。俺はマット・コーエンと自分の名前を名乗ったのち、いきなり例の質問をしてみた。 「ところであなた、サンタクロースが本当にいるって信じてます?」 「コーエンさん、信じるも何も私がサンタクロースなんだから、いるに決まってるじゃないですか。」 男の履歴書の名前欄に目を落とし、クリス・クリングルという名前に目を留めた。ああ、今度はこの手のやつか。こういうのも毎年かならずいるのだ。クリス・クリングルといえば、あの古典的クリスマス映画「34丁目の奇跡」に出てくる「本物のサンタクロース」の名前だ。多分この男は売れない役者か何かなのだろう。あっちの世界じゃこういう奇をてらったやり方で、ディレクターの目に留まることで、仕事を得られる可能性があがるらしいから。でも、ここはブロードウェイじゃない。リアルな世界のリアルな仕事なのだ。ややうんざりしながらも微笑を絶やさずに俺は言った。 「マット、マットと読んでください。失礼ですが、この履歴書に書かれたお名前、あなたの法律上のお名前ですか?僕もあの映画、大好きです。でも、今ここで問題になっているのは、僕たちの会社とあなたがうまくいっしょにやっていけるかどうかということなんです。まずはあなたの実名を教えていただかなくては。ペイチェックにまさか、クリス・クリングルなんて書くわけにも行かないでしょう。」 ややばつの悪そうな表情をうかべながら、男は実名をいった。グレッグ・ジョーンズというこれ以上ないぐらいのありふれた名前のこの男は、昔はブロードウェイの舞台にも立ったことのあるぐらいの役者(やっぱりな)だったらしいが、最近はたまにオフ・ブロードウェイの仕事が回ってくる程度で、生計はもっぱらこういう仕事でたてているらしい。 「でもね、コーエンさん、このジョーンズという名前はあくまで、法律上の名前で、本名はクリス・クリングルというし、職業はサンタクロースなんですよ。」 面接の間中サンタクロースという存在について一人称で語り続けるジョーンズに俺はやや呆れながらつきあうこととなった。役者というのものは、ここまで、役に自分を同一視出来るものなのか?だが、それはこのジョーンズという男が、役者としての柔軟性を欠き、必ずしも成功しなかった要因であるようにも思えた。 ************** しかし、結局俺はジョーンズを雇うことにした。残りの応募者にろくなのがいなかったこともあったし、あのサンタそのものの風貌はやはり捨てがたかったからだ。そしてこの決定は俺のくびをつなぐことにもなる。何故なら、採用したサンタの一人が、休憩時間中に今年一番の人気おもちゃを万引きするところを防犯カメラに捕らえられ、クビになったからだ。なんでもその男、ebayで転売してこづかい稼ぎするつもりだったらしい。そんなわけでジョーンズは、大事なローテーションのひとりとなった。それどころか、彼はサンタとしてとてつもない非凡な才能を発揮するのだ。彼は子供になつかれるのは当然として、一緒に来た親達になつかれたのだ。彼のサンタそのものの容貌はどうやら、大人たちのサンタへのトラウマ的な感情を刺激するらしい。子供がジョーンズにあるおもちゃが欲しいと伝え、彼が親のほうを一瞥すると、それがたとえ親が当初考えていた価格帯の上のものであっても、ジョーンズに向かって首を振ることが出来ず、イエスといってしまうらしい。それにとどまらず、親達がジョーンズと話したいが故に、自分の子供以外の大人へのプレゼントにもおもちゃを選び、ジョーンズの勧めにしたがって買い物を済ませているようだった。もともと高級おもちゃというのは大人向けという側面を持っているのだが、こうも当たるとは思えなかった。また、ジョーンズは何故か、おもちゃに関する専門家はだしの知識を持っており、アドバイスも的確なようだった。 ジョーンズという「本物」のサンタがいるという評判は口コミであっというまに広がり、ジョーンズがフロアにいるかいないかで、売上額にはっきり分かるほどの差が出るというような考えられないような事態が起こった。噂を聞きつけた“Today”ショウが取材に来て、ジョーンズは司会者のケイティ・カーリックにインタビューされた。取材ののち、カーリックは店でおもちゃを1万ドル分ほど買って行ったらしい。 さすがの俺もジョーンズの才能を見損なっていたことを認めざるを得なかった。彼が職務中以外でもサンタクロースを一人称で語り続けるのには最後まで慣れる事が出来なかったが。 こうして「B.J. & ショウカーズ」の最初のクリスマスは大成功に終わった。その最後の日のクリスマス・イブの夜、最後のシフトを終えたジョーンズを俺はバーへと誘った。俺は下戸で生ビールの一杯を飲み干すのにも四苦八苦するぐらいなのだが、クリスマス・イブの夜を「NYCで本物のサンタに一番近い男」と一緒に過ごすのも悪くない。どのみち俺は1人暮らしだし、ジョーンズにも家族はいないようだった。 ************** 「で、ちょっと聞きたいのだが、マット、君はサンタクロースを信じているのかね?」 俺が一杯のビールと悪戦苦闘している間に、ジョーンズはすでに三杯めのジョッキを飲み干そうとしながら、俺に聞いてきた。酒が回ってきたせいなのか、今日が契約の最後の日で、明日からは俺をボス扱いしなくて済むからなのか、ジョーンズの口調は急にくだけたものとなり、俺の呼び名も「コーエンさん」から、「マット」になっていた。もっとも最初から俺はそれを望んでいたのだが。 「いえ、グレッグ、僕はサンタを信じてはいません。」 人に質問してきただけに、これには俺自身もかねてから答えをもっていた。 「何故だね?」 何故?サンタクロースの存在を信じるには俺のクリスマスというものは、あまりにも辛い出来事が多すぎた。一度は成功しかかった小説家への道を断念したのもこの時期だったし、妻が一人娘を連れて俺の元を去ったのもこの時期だった。そして「ショウカーズ」時代の最後は、クリスマス商戦は死ぬか生きるかの瀬戸際感が常に付きまとっていた。結局死んでしまったわけだが。サンタを信じなくて何が悪い。俺はもう子供じゃない。クリスマスをそんなロマンチックな観点から見続けるには俺は、クリスマス商戦という世界にどっぷりつかりすぎている。俺にとってクリスマスの持つ意味とは、人々にどうやってもっとおもちゃを買わせるかということなのだ。だが、そんな話を全部ジョーンズにするつもりはない。俺は一番当たり障りの無いように、 「だって、僕はもう子供じゃないんだ。サンタクロースを信じる必要もないでしょう。」 「違うね、マット。私たちのようなサンタクロースを信じる必要があるのは、子供達じゃない、大人たちなんだ。」 俺は驚いた。ジョーンズが俺に限らず、社内で他の人に自分の意見らしきものを述べるのを見たのはこれが初めてだったからだ。それぐらい彼はいつもにこやかなサンタクロースの態度を崩さなかったのだ。 「マット、君は人にプレゼントをしたことがあるかね?」 「ええ、若いころは、女の子によくいろいろあげましたよ。」 「何故?」 「何故って、それは女の子達の喜ぶ顔が見たかったからです。」 「・・・・・」 「ええ、わかりましたよ、わかりました。本当のところは、あわよくばベッドに誘いたかったからです。」 なんでまた、このついさっきまで俺の部下だった初老の男に、俺の青二才時代のことを告白しなきゃならないんだ?そんな俺の気持ちを無視するかのごとく、ジョーンズは続けた。 「そうなんだ、マット。他人に何かを与えるっていうのはすごく簡単なことなんだ。ただしそれが見返りを期待してのものだったらね。みんな人にいろんなものを与えてるけど、ほとんどの場合は意識しているにしろいないにしろ、見返りを求めてのことだと思うよ。」 いつにないジョーンズの饒舌に驚きつつも、いつの間にか俺は彼の話に引き込まれていた。 「人がね、大人になるプロセスで学ぶのは、世の中すべてギブ・アンド・テイクっていうことだ。何かを与えて見返りに何かをもらう。そういうことだ。だから何かをもらうときにも、きっと与えるほうは何か、見返りを期待しているんだろうなって思ってしまう。短期的にとか長期的にとかいうことはわからないけどね。とにかくそういうものだと思ってしまう。」 「でもね、グレッグ、見返りを求めないで何かを与えるっていうこともあるんじゃないですか?」 「その通り。で、マット、君が最後に何かを人に与えて、しかも見返りを求めなかったっていうのはいつのことだね?」 いつだろう?大人になってからの俺の人生で、俺はどちらかというと、何かを与えるというより、与えられて、それを奪われることのほうが多かった。小説家への夢を与えられ、奪われた。最高に素敵な妻と愛すべき娘を与えられ、奪われた。この俺が何の見返りも求めずに人に何かを与えたのはいったいいつのことだ…? 「キョウコさんを助けてあげたんじゃないのかね?」 俺は目を丸くした。いったいどうしてこの男がキョウコのことを知ってるんだ!?そうか、シェリルだ。シェリルが喋ったに違いない。あのおしゃべり女め!シェリルは「ショウカーズ」時代の社長秘書で、社長がクビになったにもかかわらず、何故か生き残った。“Ally McBeal”のイレインを地で行く「社内情報センター」で、あらゆる社内ゴシップに精通している。もしB.J.に愛人が出来たら、B.J.の次にそのことを知るのはシェリルだろう。いや、B.J.より先に知っているかもしれない。キョウコと俺が別れる直前、シェリルがキョウコの相談に乗る振りをしてあれこれ聞き出したらしいことは、キョウコがそれとなく触れていた。あの賢明なキョウコにしては愚かしい行動だったが、キョウコにしてそういう行動に走らせるほど、俺達の離婚は辛い経験だったのだ。 ************** 2人が結婚したとき、俺は駆け出しの小説家で、キョウコはメディカルスクールに入ったばかりの学生だった。俺は2年前に出版した、処女長編がNY Timesのベストセラーリストの下のほうに入るほどの売れ行きを見せて、それなりに経済的に豊かで、キョウコの学資と生活費をそこから捻出することが出来た。だが、そのうち問題が起きた。俺の本の第2作目以降が全く売れなかったのだ。何故そうなったのか、いろいろ考えたけど、そんなことをここで話すつもりはない。また、俺の生活態度にも問題はあった。このまま俺の本が売れ続けると勝手に思い込んで、蓄えを積極的に行うことを怠っていたのだ。(20代前半の男がそうしたからって誰が責められようか?)たちまち、2人の貯金は底をつき、どちらかが定期的な収入を得なくては、生活が破綻というところまでいった。キョウコが医者になれるまであと2年。絶対にあきらめさせるわけには行かなかった。結局俺は小説家への道を断念して、「ショウカーズ」に就職した。どうやら俺にはマーケティングの才能があったらしい。たちまち頭角を現して、「ショウカーズ」で昇進し続けた。だが、俺の第二のキャリアが成功し、キョウコが駆け出しの医者として激務を続けるうちに、二人が一緒に過ごす時間は減り、すれ違いが目立ち始めた。それでも娘のメグが生まれたときには、俺達は幸せだった。これでなんとかなると思った。キョウコも俺もメグには惜しみなく愛情を注いだからだ。だが、2人の間はついには戻らなかった。俺が一度だけ犯した過ちを、キョウコの同僚の医者に見られて、キョウコにばらされた事(あの男、きっとキョウコに気があったのだ)ですべては終わった。メグはキョウコが引き取り、2人はキョウコの生まれ故郷のハワイへと戻り、キョウコは外科医として働いている。もちろん、俺にはメグに面会する権利は与えられているのだが、メグと俺の間には、アメリカ大陸と太平洋の半分が横たわっているのだ。俺の仕事がらということもあるが、離婚後にメグとクリスマスを過ごしたことは一度もない。 (Part 2に続く)
by sabretoothjapan
| 2004-12-24 22:33
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