クワストさんのMusic Circusレビューの最後はJCS。
クワストさんのところの企画の「100の質問」への回答に書いたかもしれないが、JCSはALWのもののなかでは唯一好きになれない作品だ。俺にはこの作品をクワストさんのように、あるいはおそらく四季版がそうだろうと思われるように、ストレートに聖書をロックオペラにしたものとは受け止められない。
俺から見るとJCSは新興宗教崩壊の物語だ。Jesusは自分をカリスマ的存在に仕立て上げて民衆を導くのに成功するが、カリスマとなることで自分のアイデンティティそのもののコントロールを失ってしまう。民衆は実はJesusが本当は何者でもいいわけで、彼を勝手にスーパースターに祭り上げて、自分達の理想どおりに行動することを要求する。そしてそれはJesus自身の自滅へとつながっていく。ある意味で賢者であるJudasは民衆達にJesusが「消費」されてしまわないように、なんとかJesusの行動を変えようとするのだが、かなわずに逆に裏切ってしまう。この裏切りの理由は作品中でも明らかにされず、演出・演技の上での解釈にゆだねられる部分が大きいわけだが、どうもRiceとWebberはその曖昧さの中に、キリスト教の正統的な解釈、つまり、実はJesusは本当に救世主だったというような見解を忍び込ませているように思う。
でもさ、どのナンバーだったか忘れたけど、
"Hey JC, JC, Won't You Die For Me?"
なんて陽気に聞くシーンなんて見ると、民衆は実はカリスマなんて社会の消費物だと思っているんだという見解に作者達も同意していると思うんだけどな。そのへんの曖昧さというか、キリストを斜に構えてみているようでいながら、実は正統的な受け止め方が見え隠れするという、作者の一種の「したたかさ」がいやなのだ。こんな風に考えて興ざめするのは、宗教的な作品には基本的には斜に構えて接する俺の悪い癖でもある。
でも、四季版のJCS、特に歌舞伎版はいっかい観てみたいとは思う。
ところでヘロド王は、RiceとALWの初期作品につき物の、プレスリーの化身だと思ってたけど、違うんかな?