Broadway.comのKen
Mandelbaumのコラムは恒例のQ&A特集であるわけだが、
"Ragtime"を振り返る、という話で彼は、このミュージカルのひとつの限界として"Father"、"Mother"などという名前だけで特定されたキャラが立ちにくい、という部分を指摘している。思うにこれは歴史を描こうとした、「パノラマミュージカル」共通の限界だと思う。ミュージカルの最大の特徴である歌、これは個人レベルでの感情を表現する上では非常に効果的であるが、歴史といった感情と関係ない、逆に理解するのに論理性が必要な事象を表現するのには不利だ。この作品の中で唯一名前のきっちりと存在するキャラのColehouseが2幕になるころには完全に主役になったのも無理は無い。
また、Weidman/Sondheimの作品はやはり歴史を描こうとしたものばかりだが、それに比較的成功している"Pacific Overtures"がSondheimがかかわったショウの中では最もキャラクターが描かれていないと評されているのもそういう根源的な問題があるのだと思う。
他に歴史ミュージカルとして成功したものには"1776"があるけど、あれは歴史ではなくJohn Adamsという個人を前面に出すことで成功しているのだと思う。
あともうひとつ、"Dracula"に関する質問で、Melissa Erricoはあの素晴らしい実力なのに何が故に失敗作ばかり出続けるのかというのがあったが、全く同感。Melissaタン、限定公演の役では評価が高いものばかり("One Touch of Venus," "Sunday in the Park with George," "Finian's Rainbow")なのに、オープンエンドのB'way作品はことごとく、興行的、芸術的に失敗している。(ま、"My Fair Lady"は成功したみたいだけど、これは観てないのでなんともいえない。)これには俺は実はひとつの仮説があるのだが、それはまたの機会に。