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"Everything in Life is Only for Now."
これはB'wayのヒット作“Avenue Q”の最後の台詞です。 人生いいときも悪いときも決していつまでも続くわけじゃないんだから、投げず、腐らずその時々をなんとかやっていこうや。 この作品の根底をなすこのメッセージ、このブログのタイトルにしました。 ありがとう、エキブロ新聞 フォロー中のブログ
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トラバでボケましょう2006 第8回大会への参加作品です。 お題: 朝おきたら、首の左右に、 エラがありました。 えぇーーーーー! らぁーーーーー! さてっ、どうしたもんかっ……。 (再追記:とりあえずは、直しました。まだ文章が変ですけど、それは私の筆力の至らなさです。) ***** 「あー、あー、あー、マイクのテスト中、マイクのテスト中。みなさん、聞こえますか? ただいまご紹介に預かりました、鰹田祐次です。今日、このおめでたい場で、私は皆さんに私の母の話をしたいと思います・・・。」 ***** 祐次が母親の異変に気付いたのは、ある朝のことだった。その日は母親も巡業から戻っており、早く起きて、いつもの祖母に替わって朝ごはんを作っていた。 「あれ?母さん、両耳の下のでき物みたいなの、それ何?」 「ああ、これね、なんかわからないけど今朝起きて見たら出来てたの。」 「なんか、変な形してるね。痛くないの?」 「全然。」 「お医者さんに見せた方がよくない?」 「大丈夫でしょ、ま、お仕事に差し支えるようならお医者さんに行くわ。さ、さっさとご飯おあがんなさい。学校に遅れるわよ。」 差し支えて欲しいな、今のお仕事止めてくれたら、クラスのみんなにも影でこそこそ笑われることがなくて済むのに、という心の中の呟きを祐次は押し殺し、ハムエッグを頬張り始めた。 母、麗子のその仕事と言うのはプロレスラーだ。それも悪役で、「デビルフィッシュ麗子」というリングネームで、顔には派手な隈取を描き、口から墨を吹いて相手を目潰し攻撃しては反則負けを繰り返している。父の啓次郎はK-1の選手だったが、5年前、祐次が5歳の時に試合中の事故がもとで亡くなっていた。それ以来、麗子は自分が巡業に出る時には自分の母、つまり祐次の祖母に留守宅を任せては、日本中で墨を吹きまわって家計を支えていた。麗子のそのコミカルな試合ぶりは人気で、プロレスオタクたちのカルト的な人気を集めていた。プロレスを始める前は、水泳の800m自由形のオリンピック選手だったというプロモーターの触れ込みも、麗子がただのショウマンプロレスをやるお笑い系ではないというイメージ作りに役立っていたようだ。だが、水泳選手としての麗子の活躍は祐次が生まれる遥か前のことだし、家には麗子が水泳選手だったことを示すものは何もない。父のチャンピオンベルトなどは額入りで飾ってあるのに。一度、祐次は母に、 「ねえ、お母さん、本当にオリンピックに出たことあるの?」 と聞いたことがある。母は笑顔で、 「うふふ、そんな昔のこと忘れちゃったわ。」 とだけ答えた。 学校に着くと、クラスで唯一のプロレスオタクである大沢が話かけてきた。 「なあなあ、昨日の試合見たかよ、凄かったよなー。最後は反則負けになっちまったけど、あれはしょうがないよなー。コンドル明日香があそこであんなキック飛ばすんだもんな、反則でもしないとしょうがないよ。」 大沢は深夜枠の放送だというのに、プロレス番組を欠かさずみているのだ。 大沢には未だに、プロレスが八百長だと言うのがわかっていないらしい。そして、そんな八百長のショウに参加し続ける母親が祐次にはいやで仕方がなかった。彼らが本気で戦っているとか、本当に強いのだと信じているような馬鹿は大沢ぐらいなもので、多くのクラスメイトたちは影で麗子のことを笑っているのだ。 「僕、試合の放送は見られないんだ。ほら、女子プロレスのテレビって夜遅いから、お祖母ちゃんが見せてくれないんだ。」 と祐次は嘘をついてごまかしていたが、祐次が試合の放送を見ない本当の理由は、母親が日本中の人が見ている前で、八百長をやって笑われてお金をもらっているというのを見るのに耐えられないからだった。だが母は、自分のやっている仕事にまるで疑問を持っていない様子で、巡業から帰ると、いつも旅先での試合の様子などを家族に語ってきかせる。その楽しそうな様子を見た祐次は、母親にプロレスラーの仕事を止めてくれとは言えなくなってしまう。 そんな祐次にとって、最悪だったのは先々月の授業参観にたまたま麗子が家にいて、いつもの祖母に代わって現れたときだった。身長が177cmある麗子は教室の後ろに並ぶ他の母親よりも頭ひとつ大きくて目立つ。祐次には、他の母親達が授業の間中麗子のことをひそひそ噂しているような気がして仕方がなかった。大沢はおおはしゃぎで、授業が終わったあとに麗子のそばに寄って行って、 「鰹田くんのおばちゃん、墨吹いてぇ。」 というリクエストまでした。祐次の気持ちなど知らない麗子はそれに応えて。 「墨だと教室が汚れちゃうから、お茶で我慢してね。」 と、持っていた水筒からお茶を口に含んで、霧吹きパフォーマンスまでしてみせた。 「この次は、あのお化粧してきてねー」 という大沢の言葉に 「いいわよ、ついでにマイクも持ってきて、パフォーマンスしてあげるからねー。」 という母を見て、祐次はこの次、授業参観に母親がくる時には、絶対に仮病を使って休むと心に誓った。 ***** 3日後の午後、祐次が学校から帰ると、麗子が笑顔を浮べながら、ウキウキした様子で、 「祐次、祐次、これ見て。」 と自分の耳の下の部分を指差した。見ると、この前までは腫れ物のように見えたものが、もっとグロテスクなものに変っていた。それはまるで・・・。 「母さん、何それ?まるで魚のエラみたいじゃないか。」 「みたいな、じゃないのよ。本当にエラなのよぉ。」 「ええええ??」 「だって、さっきお風呂の中に潜ってみたんだもん。あのね、いっくら潜ってても息苦しくならないの。エラで息が出来るから。すっごいでしょー。」 「すっごいでしょうじゃないよ、母さん。いったいどうやってあの小さなお風呂に潜れたんだよ。そんなことより、大変じゃない。すぐにお医者さんに見てもらいなよ。」 「えー、どうして?」 「だって、それって異常じゃない。何かの病気に決まってるよ。すぐに入院でもして、その変なもの取ってもらわなきゃ。」 「取るですって、とんでもない!便利じゃない、これ。試合に使えるわよー。そうだ、事務所に話して『水中デスマッチ』とかやろうかな。リングの上にでっかい水槽作ってさ。あ、もっといい考えがある。このエラを売りにしてさ、テレビのバラエティ番組とかにも出させてもらおうか。こんな人、ほかにいないからさ、絶対にうけるわよー、きっと。」 「何を考えてるの、本気?母さん?」 麗子は本気だった。『水中デスマッチ』こそ、水槽作りにお金がかかりすぎるために実現しなかったが、所属するプロレス団体のプロモーターを通じて、麗子の「特技」は売りこまれ、プロレス以外でも活躍するようになった。まず、三重県の伊勢志摩で「海女に挑戦!真珠取り競争!」という企画を立てて、完勝した。次にその話を聞いた、「水中バレエ団」なる団体から、「リトル・マーメイド」に出演しないかという誘いが来た。 「ついに来たわねー。私がお姫様になる日が。芸名も『マーメイド麗子』に変えちゃおうかな、この際。」 だが、リハーサルに喜び勇んで駆けつけてみると、与えられた役は人魚姫アリエルではなくて、魔女の役だった。だが、麗子はそれにめげることなく、 「やっぱり私は根っからの悪役なのよねぇ。そのほうが性にあってるみたい。」 といいつつ、舞台となる巨大水槽で人魚姫役に向かって墨を吐き続けた。 だが、水中バレエでの出演がテレビのニュースで流れたことがきっかけとなって、麗子の人気は大ブレイクした。まず、とあるバラエティ番組が、お笑いタレントの〇頭2:50と、水中息止め競争で勝負という企画を立て、これは勝負にさえならなかった。当たり前だ、〇頭は何を考えていたのだろう。この番組を皮切りに、麗子はバラエティ番組で引っ張りだこになり、その人気にあやかろうとした鰹節製造会社の「にん〇ん」が、麗子をCMに起用した。このCMで「デビルフィッシュ麗子」の名前はいちやく全国的に知られるようになり、漁業業界の「ママドル」として一気にもてはやされるようになった。次の年の野球の四国アイランドリーグ開幕戦では高知県のチームに呼ばれて始球式もやった。だが、東京都のマグロ市から名誉市民にするという申し出だけは何故か断わった。そのわけを祐次が聞くと、 「あのね、女はね、マグロじゃだめなのよ。祐次も大人になればわかるわ。」 とだけしか答えてくれなかった。 こうして、「デビルフィッシュ麗子」の名前は全国津々浦々にまで知られるようになったのだが、これは祐次にとっては地獄だった。それまでテレビに映るといっても深夜枠の女子プロレスを見る小学生など極めて少数のものに限られていたのだが、バラエティに出だすようになってから、はるかに多くの級友達が、隈取り入りの顔で墨を吹く母親の姿を見ることになったからだ。祐次にはわかっていた、彼らが麗子のことを語るとき、そこにあるのは決して好意でも尊敬の念でもないことを。祐次に向かって面とは言わないものの、クラスの女子たちは祐次の母親を「半魚人」と呼んでいた。彼らにとって「エラ付き女」の麗子と言うのは一種の見世物なのだ。そうした陰口は祐次の耳にもどこからともなく聞こえてきた。その中にはひとつ祐次が聞き捨てならないものがあった。それは麗子が元オリンピック選手だというのは嘘だという噂だった。 悲劇は突然起こった。あるお笑い番組で、麗子が人気ナンバーワンのアイドル歌手である水森真子に墨を吹きかけて泣かせてしまったのだ。もちろん、番組的には悪役の麗子がいたいけな少女をとっちめると言うありがちなパターンで、狙い通りに笑いを取ることができたのだが、そうは取らない者もいた。放送のあくる日、祐次は水森真子のファンである6年生4人組に放課後に体育館裏に呼び出された。彼らは 「てめえの母ちゃん、よくも真子りんを泣かせてくれたな。」 と、4人がかりで祐次を袋叩きにした。 「おめえわかってんのかよ。おめえの母ちゃんのやってることなんて、全部八百長じゃねえか。オリンピックの選手だったっていうのも嘘だろ。俺のクラス一の物知り博士が調べたんだよ。オリンピックの水泳に参加した選手の全部のリストをな。おめえの母ちゃんの名前なんて載ってなかったっていったぜ。この八百長野郎!」 まずいことにその日は母親が家にいた。泥だらけであちこちが裂けた洋服帰宅したのでは、何が起きたかを隠しとおすわけにはいかず、母親のことが原因でいじめられた事などを告白せずにはいられなかった。祐次の目には涙があふれてきた。そんな孫の言葉に耳を傾けながら、祖母は 「いいかい、祐次、お前の母さんは今でこそ、あんなふうにお笑いみたいなことやってるけど、昔は凄かったんだよ。水泳でオリンピック選手だったんだからね。」 「嘘付き!お母ちゃんもお祖母ちゃんも嘘ばっかり!学校のみんながいってるよっ!お母さんは本当はオリンピックになんて出場してないって!あのオリンピックの水泳のレースの全部の記録を調べた子がいるんだ。お母さんの名前なんて載ってないって。学校のみんないってるよっ!プロレスラーなんてみんなそんなもんだって。本当は凄くもなんともないのに、凄い振りをしてるだけだって。見掛け倒しだって。だから、あんな風に墨を吐いたりしてごまかしてるんだって。もうやめてよっ、あんなバカなこと。恥を晒さないでっ!」 殴られる!祐次はそう思って思わず固く目をつぶった。しかし、何も起きなかった。目を開けて見ると、祐次の目には、にっこりと笑った母親の顔があった。 「祐次、正直に話してくれてありがとう。わかった。お母さんはがんばるよ。世間の人達にね、お母さんは凄いんだって認めさせてあげる。祐次がね、学校でお母さんのことを自慢出来るようにしてあげる。よーし、楽しみになって来たぞーっ!」 祐次には、その言葉の意味がわからなかった。だが、母親の笑顔の中の目だけは、なにか炎のようなものが燃え上がっているように見えた。その迫力に気おされて、祐次は母親にその言葉の意味を問いただすことができなかった。 ***** 1週間後、祐次が朝学校にいくと、大沢がスポーツ新聞を握り締めて近寄ってきた。 「おい、鰹田!お前の母ちゃん、ついに気が狂ったんじゃねえの!」 「え、何のこと?」 「何のことじゃねぇよ、これみろよっ!」 新聞の1面には、 「デビルフィッシュ麗子、素潜り世界チャンピオンに挑戦!」 「酸素濃度希薄の深海、無謀な試みか?」 という見出しがあった。祐次は、ようやく先日の母親の言葉の意味を理解した。 「すごいよっ!お母さんは勝つよ!だって潜りなら誰にも負けないもん。水の中だって息が出来るんだもんっ!」 「バカだなあ、お前。ちゃんとこの記事読んでみろよ。素潜りの世界記録って100m以上潜るんだぜ。それだけ深くなると光が届かないから、酸素も水の中にあんまりないんだよ。魚だったら生きていけるかもしれないけど、人間みたいな大きな生き物が生きていくのは無理なんだよ。だから、エラがあっても関係ないんだよ。どうするんだよ、お前の母ちゃん、溺れて死んじまうぜ。」 祐次が学校から走って帰ると、母親は家にはいなかった。祖母に残された伝言によると、試合の日までトレーニングのために家を空けるという。場所を聞くと、祖母は、お母さんの気持ちがくじけるので、試合が終わるまでは祐次とも話さないでおきたいといい残していた。 その夜、テレビのニュースでは、麗子のことが取り上げられていた。大学の教授と言う人が出てきて、大沢が祐次にいったようなこと、すなわち、深度がそこまで深くなると、魚ならともかく、人間の顎に申し訳程度に存在するエラ程度では、十分な酸素を得ることが出来ないであろうこと、この挑戦は無謀で命の危険が高いので止めたようがよいというようなことを話していた。また、挑戦相手となる素潜り世界チャンピオンのフランス人、ジャック・マヨネーズという人のインタビューも放送していた。彼は自信たっぷりに、 「とても、興味深い挑戦なので受けることにした。人類初のエラ人間ということだが、私のレベルのもぐりではエラの存在は関係ないと思う。彼女の命の心配があるので、十分なサポートをして欲しい。」 と余裕の発言をしていた。 ***** 1ヵ月後、「デビルフィッシュ麗子」こと鰹田麗子とジャック・マヨネーズの素潜り対決は、フランスのとある島の沖合いで行われる事になった。祐次は学校を休んででも駆けつけたかったが、母親はそれを許さず、祖母と2人で日本でテレビの中継を見ることになった。 「さあ、人間対エラ人間の注目の対決がまもなく始まります。!デビルフィッシュ麗子はどのようなコスチュームで出てくるのでしょうか!いつものように墨吹きのパフォーマンスはあるのでしょうか?あっ、両選手が船から出てまいりましたっ!・・・あれ?」 アナウンサーの拍子抜けしたような声と共に、テレビカメラは麗子の全身をアップで捉えた。その姿は、水着ではあるが、いつものような派手なコスチュームではなくて水泳選手が着る様な地味なものだった。もちろん隈取りなどなく、頭には白いゴム製のキャップをかぶっている。 「あー、デビルフィッシュは全くのすっぴんですねー、どうやら、本気で世界チャンピオンに挑戦するつもりのようですねー。」 当たり前だ、命がかかっているのに、と祐次は心の中でつぶやいた。麗子の横にはチャンピオンのマヨネーズが立っていた。彼は背丈こそ麗子と同じぐらいだったが、その胸はテレビで見たよりもはるかに厚く、がっちりした体格をしていた。彼が「人間潜水艦」と呼ばれる理由がわかったような気がした。 「今回の対決は、1対1の試合であることを強調するために、2本のロープを海中にたらし、両者が重りを身体につけて、同時に水中に潜り始めます。先に上がってきた方が負け、言って見れば海中のチキンレースです!150m地点にはサポートスタッフが待機しており、事故があった場合に備えてはいます。しかし、このような試合は主催者側にとっても初めての経験ですから、何が起きるか全く予想が付きません。さあ!両者水中に入りました!」 50m地点の水中カメラがマヨネーズと麗子の姿を捉える。あとはカメラでは2人の姿を追うことは出来ない。カメラは水上の船にある実況席を映した。 「さて、予想される時間どおりだと、そろそろ2人の選手は150m地点に到達するころであります。あ、ただいま入った情報によりますと、両者とも150m地点でのサポートスタッフの制止を振り切って更に深海へと向かっている模様です!これより先、サポートスタッフはおりません、大丈夫なのでしょうか!」 長い沈黙。 「あ、ただいま150m地点のサポートスタッフからの連絡が入りました!ジャック・マヨネーズ選手が上がって来たようです!どうやら意識がかなりもうろうとしている模様で、スタッフに支えられての浮上となっているようです。ということは、マヨネーズ選手は失格と言うことになるのでしょうか?解説の小笠原さん?」 「ええ、そうですね、素もぐりでは、自力で完全に意識のある状態で海上まで上がってこられなくてはなりませんので、サポートスタッフに助けられた時点で失格になります。しかし、こうなりますと、デビルフィッシュ選手のほうが心配になってきますね。」 「そうですねー、デビルフィッシュ選手に関する情報は何も入って来ておりません。」 ああ、お母さんが死んじゃう・・・、僕のせいだ、僕がお母さんのことをいんちきだなんていったから、お母さんがこんな無理な挑戦をしたんだ・・・。 実況のアナウンサーも、状況の深刻さと情報のなさゆえに言葉を失い、テレビからは放送事故かと思われるほどの長い沈黙が流れた。 「あ、今、マヨネーズ選手が海上に現れました!どうやら意識がないようですが、大丈夫でしょうか?直ちにボートが近づいて、マヨネーズ選手を引っ張り上げておりますが、大丈夫なのでしょうか。それにしても、いまだに上がってこないデビルフィッシュ選手のことが心配されます。」 神様ごめんなさい、ごめんなさい、お願いですから、お母さんを助けてください、お願いです、いんちきでもオリンピック選手でなくてもいいですから、お母さんが生きていてくれたら、もう何もいいません、墨を吹いても、真子ちゃんを泣かしても、それで僕がいじめられても決して文句をいいませんから、お願いですどうかお願いです・・・ 祐次の祈りも虚しく、再び沈黙が流れた。 「あ、ただいま連絡が入りました!デビルフィッシュ選手が150m地点に戻ってきたという情報が入ってまいりました!意識もはっきりしているとのことです!デビルフィッシュ選手、無事です、無事ですっ!」 3分後、水中カメラは自力でロープを伝って浮上してくる麗子の姿をはっきりと捉えていた。水上からのカメラが麗子がガッツポーズで水に上がる瞬間を映し出したとき、その手には、麗子が200mの深度に達したことを示す赤い札が握られていた。 「デビルフィッシュ選手が浮上しましたっ!無事です!無事です!どうやら200mにまで達した模様です!世界チャンピオンを破りました!やりました!やりました!」 「お祖母ちゃん!すごいねっ!お母さんはやっぱりすごいよ!もう、オリンピック選手でなくてもいいよ、墨を吹いて反則負けになってもいいよ、あれが僕のお母さんだね、すごいんだね!僕、大きくなったらお母さんみたいに、プロレスラーになるよっ!」 ***** 1ヵ月ほど後のある夜、祐次はいつものようにぐっすりと眠っていた。母親は相変わらず巡業で留守だ。あれ以来、祐次は深夜まで起きて母親の試合がテレビで放送されるのを見るようになった。その夜の試合でも、麗子は相変わらずで墨を吹き、ただのスリーパーホールドを「大王イカ絞め」などと大袈裟に呼んで披露している。あの素潜り対決以来、「いいもの」への転向も勧められたようだが、 「やっぱり私には悪役が似合ってるのよねえ。隈取り無しでリングに上がるの恥ずかしいしさ。」 と悪役を続けている。今日も試合は反則負けだった。 祐次は夢の中で、大きくなった自分が「オクトパスユージ」というリングネームで、男前のいいものレスラーをウリウリといじめていた。 翌朝目覚めた祐次は耳の下に違和感を感じた。触ってみるとなにか腫れ物のようなものが出来ている。祐次は笑顔で飛び起きた。 「お祖母ちゃん!大変だよっ!見て見て!これっ!」 ***** 「ここからの話は皆さん、先生方から伺っていると思います。私の母、麗子は、その後世界中で次々と生まれるエラを持った人間、今では『両棲族』と呼ばれている人達の最初のひとりとなったわけです。最初のうちは「半魚人」などと呼ばれてきた我々も、今ではすっかり人々から受け入れられ、今では海上保安庁のレスキュー隊員のほぼ全員が両棲族で占められるようになりました。私は自分がその第1号となることが出来たことを誇りに思っています。まあ、体が細すぎてプロレスラーになることが出来なかったのは残念ですが、天国の母親もこの道を選んだ私のことを私と誇りに思ってくれていると信じています。あ、あと、これはどうでもいいことなのですが、母はやはりオリンピック選手でした。ただ、母が参加するはずだったオリンピックは、今ではもう存在しない、北の方にあった日本との関係のよくないある国で開かれることになっていて、日本がその大会をボイコットしたために母は結局代表に選ばれながらもオリンピックでは泳ぐことが出来なかったということを、私はずっと後になって知ったのでした。そのボイコットに抗議して母は時の首相に対して暴言を吐き、それがもとで水泳協会を除名され、それまでの記録までがすべて抹消になったそうです。母は水泳界に決別するためにそれまでの賞状やメダルなど、すべて、焼き捨てたので、家には何も残っていなかったのです。そういえば、母自身は一度も自分はオリンピック選手だったとは私にはいったことがありませんでした。その話はすべては祖母か、あるいは母のいたプロレス団体の方から聞いたのです。 さて、お話が長くなってしまってごめんなさい。皆さん方は、今、こうして初めての卒業式を迎えた、人類初の水中小学校である『竜宮小学校』を旅立つわけですが、これからも学業に、運動に精進して、大きくなって社会にでてからも、両棲族としての誇りを忘れずに、しっかりと生きて行ってくださいね。最後になりましたが、皆さん、御卒業おめでとうございます。」 パチパチパチパチ 「はい、両棲族出身の初の海上保安庁長官であられます、鰹田祐次様よりお祝いのお言葉をいただきました。では、次に卒業証書の授与に参ります・・・。」 ■□■□■□■【トラバでボケましょうテンプレ】■□■□■□■□■ 【ルール】 お題の記事に対してトラックバックしてボケて下さい。 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by sabretoothjapan
| 2006-07-23 20:57
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